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「DNAチップ研究所ってどんなところ?」

「DNAチップ研究所ではどんな仕事や研究をしているの?」

DNAチップ研究所は、大学や企業、病院などで研究する人に向けて、遺伝子の解析を手伝ったり、詳しい情報や新しい情報を伝えたりする、研究を支援する仕事をしています。

また、その中で培った遺伝子解析技術で、一般のみなさまの健康の手助けになるような、がんなどの病気に対する診断技術の開発をしています。

そして、病気になる前に予防できる技術の開発を目指しています。

ここでは、DNAチップ研究所がたずさわっている、遺伝や遺伝子のことについてご紹介します。

1.遺伝子と健康って関係あるの?

遺伝子が変異すると病気になりやすい場合も

私たちの体には、2万5千種類ほどの遺伝子があります。

遺伝子の中には病気のなりやすさを決めるものがあり、その中の一つ、あるいは複数のものが「変異を起こしている」と病気になりやすいことがあります。

変異だけでは決まらない

遺伝子の「変異」で全てが決まってしまうわけではありません。健康は、体の中で様々な遺伝子がバランスよく、適切に働くことにより維持されているからです。

遺伝子の働きの変化と健康状態の変化には関係があり、これを上手に使うと早期に病気を発見し、対策をすることができます。

2.遺伝子ってなんだろう?

遺伝子はDNAという物質でできている

遺伝子とはどういうものなのか・・・。

遺伝子はDNAという物質で、できています。DNAは細胞の中にあり、長い鎖のような形をしており、たった4種類の塩基で遺伝情報が書かれています。塩基は遺伝情報を表す文字のようなもので、具体的にはA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)です。ヒトの遺伝子のDNAは、全部合わせると塩基が30億個ほどもつながった鎖のような超巨大分子です。アデニン(A)は必ずチミン(T)と、シトシン(C)は必ずグアニン(G)と向かい合って結合し、らせん状にからみ合った2本の鎖のような構造をしています。

ゲノムってなに?

私たちの遺伝情報は、この30億文字の並びの中に全部書き込まれています。これをゲノムと呼びます。

ヒトのゲノムはヒトゲノム、マウスはマウスゲノム、イネはイネゲノム・・・と呼びます。

いのちの設計図
~遺伝子DNAはコピーされて親から子へ~

私たちの体はおよそ60兆個の細胞からできていて、最初は1個の受精卵からスタートしました。受精卵には父親のゲノムDNAのコピーと母親のゲノムDNAのコピーが1つずつ入っています。

受精卵は細胞分裂を繰り返して2個になり、4個になり、8個になり・・・と、どんどん増えながら体を作っていきます。そのたびに、ゲノムDNAが正確にコピーされて一つ一つの細胞に配られます。
こうして、増えた細胞で体全体が作られます。

体の細胞すべてに遺伝子情報が入っている

私たちの体の細胞は、ゲノムDNAをコピーしながら増えたものなので、すべての細胞に、「私のゲノム」という全遺伝子の情報が書かれた設計図がおさめられています。

「遺伝」とは、設計図のような情報を持った遺伝子DNAをコピーして伝えるということなのです。

3.遺伝子情報で体ができるしくみって?

遺伝子の使い方は調節されている

ところで、どの細胞にも同じゲノムDNAが入っているのに、どうしてこんなに複雑な体ができているのでしょうか。

脳なら脳、肝臓なら肝臓、筋肉なら筋肉の細胞の中で、それぞれに必要な遺伝子が選ばれて、必要な量だけ遺伝子を使うようにコントロールされています。

それでは、どんな風に調節されているのでしょうか。

DNAは細胞の中の核にある

コントロールされる仕組みを知るために、DNAがどこで何をしているのかを説明します。
DNAは細胞の中の核という部分にあります。糸のような形をしており、ヒストンという円盤状のたんぱく質に巻きついたDNAが折りたたまれて核の中に入っています。人のDNAを全部伸ばしてつなぐと、約2メートルになります。

※細胞分裂するときだけ、染色体というDNAを束ねたかたまりになります。

DNAのうち遺伝情報を持っているのは1.5%

2メートルのDNAのうち、遺伝情報を持っていて、設計図として使われている部分、すなわち「遺伝子」の部分はわずか約1.5%(長さに換算すると3cm)です。

残りの98.5%は、遺伝情報を持たない部分ですが、遺伝子の働きを調節する役割を担っている部分もあることがわかっています。 

DNAの情報を使ってたんぱく質をつくる

遺伝情報は言いかえれば、たんぱく質の設計図です。

4種類の塩基で書かれた遺伝情報をmRNA(メッセンジャーRNA)にコピーし、細胞核の外に運び出します。運び出した遺伝情報をリボソームという組み立て工場に持ち込んで、たんぱく質をつくります。

たんぱく質は、人の体にある20種類のアミノ酸を設計図どおりにつなげてつくられます。アミノ酸の数や種類、つなげ方などで数万種類のたんぱく質を作ることができ、複雑な体を作ることを可能にしています。

mRNAの種類や量を調節する

脳なら脳、肝臓なら肝臓、筋肉なら筋肉の細胞の中で、それぞれに必要な遺伝子が選ばれて、それらが状況に合わせて働く仕組みがあります。つまり、必要な量だけ必要な遺伝子をコピーしたmRNAをつくるように調節されているのです。

例えば脳では、1万種類以上のmRNAがそれぞれに決まった量比でつくられています。肝臓でも筋肉でも、mRNAがそれぞれバランス良く生産されています。

ですから、ある組織のかけらをもってきて、そこにあるmRNAを調べると、その組織は何だったのかを言い当てることができますし、病気になってバランスが変わっているかどうかもわかります。

4.遺伝情報でわかることはあるの?

遺伝情報は一人ひとりオリジナル

遺伝情報は、両親から伝わりますが、同じ両親から生まれても遺伝子の組み合わせは何兆通りもあり、そのため兄弟や姉妹でも全く同じになることはありません。DNAが親から子に伝わるときに、染色体や遺伝子に変化が起こることもあります。

例えば体質の違いを調べることもできる

遺伝情報は、異なる人同士で比べると約0.8%の違いがあり、体の特徴や体質の違いに影響を与えます。遺伝情報の一か所の違いが体質の違いをもたらすこともあり、これをSNP(スニップ:一塩基多型)といいます。アルコールに強いか弱いかも、アルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子(ALDH2)のSNPが関係しています。

5.遺伝情報はどうやって調べるの?

遺伝情報を調べるいろいろな方法

DNAが親から子に伝わるときに、遺伝子に変化が起こることがあり、変化によっては病気を起こす原因となることもあります。また、体の一部の細胞・組織の遺伝子に変化が起きて、病気を起こすこともあります。

そういった体の変化や病気について研究するために、遺伝子にどんな変化が起きたのかを調べます。調べる方法は様々ありますが、例えばDNAチップ研究所でもこのような方法で調べることができます。

6.遺伝情報を調べると何が分かるの?

PCRで分かること

食品や水、堆肥などに含まれている細菌の割合

変異の有無

注目している遺伝子の働き具合

マイクロアレイで分かること

遺伝子全体の働き具合(mRNAの量)

次世代シーケンスで分かること

遺伝子全体の働き具合

遺伝子全体の変異

7.遺伝子を使った検査って?

研究のためだけじゃないいろいろな遺伝子関連検査

研究のために遺伝子を調べるだけでなく、研究結果を実用化した、健康の手助けになるような検査があります。

様々ありますが、例えばDNAチップ研究所で開発した検査には、「EGFRリキッド」「肺がんコンパクトパネル」などがあります。

遺伝のしくみに関連する検査を「遺伝子関連検査」といい、このように分類されます。

  1. 生まれ持った遺伝子の特徴を調べる検査
    (遺伝学的検査)
  2. 病気などで変化した細胞・組織の遺伝情報を調べる検査
    (体細胞遺伝子検査)
  3. 感染症をおこす外来性の病原体のDNA・RNAを調べる検査
    (病原体遺伝子検査)

遺伝子検査の結果から医師が診断することを遺伝子診断といいます。

1.生まれ持った遺伝子の特徴を調べる検査
(遺伝学的検査)

両親から受け継いだ遺伝情報、すなわち原則的に生涯変わることのない遺伝子の特徴を調べる検査です。染色体や遺伝子の変化、SNPなどを調べます。

検査方法

  • 口腔粘膜、血液、唾液、皮膚などを採取

  • DNAを取り出して増やす

  • DNAの配列を調べる

  • 病気や体質に関わる遺伝子と照らし合わせて違うところを見つける

検査例

病気の原因となる遺伝子異常を見つける検査

ある特定の遺伝子に異常があると発症する病気かどうかが分かる。

例:筋ジストロフィー、血友病など

薬の効果・副作用を調べる検査

抗がん剤などの効果や副作用の予測に関する遺伝子型が分かる。

病気にかかる可能性のリスク判定

平均的な病気のかかりやすさの確率と比べて、どの程度かかりやすいかが分かる検査。複数の遺伝子が関わっている疾患を対象にしている。また、遺伝の要因に加えて、環境の要因、生活習慣など色々な要因の組み合わせで病気が発症するので、遺伝子がすべてを決めるわけではないことをふまえて検査を受けることが重要。

例:乳がんリスク、アルツハイマー病リスク、生活習慣病リスクなど

体質

例:太りやすさ、アルコールに強いか弱いかなど

2.病気などで変化した細胞・組織の遺伝情報を調べる検査
(体細胞遺伝子検査)

DNAを調べる検査

主に、がんの治療で行われる検査です。がんは体の一部の細胞・組織の遺伝情報に変化が起き、勝手にどんどん増えてしまう病気です。DNAの変化の仕方によって、薬の効き方や予後が異なるので、どのように変化しているのかを調べて治療に役立てます

検査方法

  • がん組織などを採取

  • DNAを取り出して増やす

  • DNAの配列を調べる

  • 薬の効き方や予後に関わる遺伝子と照らし合わせて調べる

検査例

  • 薬の効き具合を予測する検査 (EGFRリキッド・肺がんコンパクトパネル)

mRNAを調べる検査

生まれ持った遺伝子の違いではなく、遺伝子の働き具合によって体の状態を調べる検査です。体の状態によって遺伝子の働き具合、すなわちmRNAの量が変化します。「どんな遺伝子が」「どんなたんぱく質を」「どれくらい作っているか」ということを、mRNAの量を測ることで調べる検査です。

検査方法

  • 血液などの組織を採取

  • RNAを抽出する

  • RNAの量を測る

  • 病気や健康状態を反映する遺伝子の量を調べて判定する

検査例

  • 病気の状態や体調の変化を調べる検査
  • 治療後の経過を予測する検査(マンマプリント)

3.感染症をおこす外来性の病原体のDNA・RNAを調べる検査
(病原体遺伝子検査)

人の体に侵入してきた目には見えない病原体(ウイルス・細菌等の微生物)のDNA・RNAを調べて、感染の有無などを調べる検査です。

検査例

  • 新型コロナウイルス、HIV、C型肝炎などの感染について調べる検査

8.遺伝子でなんでもわかっちゃうの?

遺伝子がすべてを決めているわけではない

体は遺伝情報をもとにして作られており、遺伝情報から体の特徴や体質、これからかかる病気などのことが、ある程度分かるようになってきました。体質を理解し、生活習慣を見直すことで、日々の健康に役立てることができます。しかし、遺伝子が全てを決めているわけではありません。がん・アルツハイマー病・生活習慣病などは、遺伝による要因だけでなく、環境や生活習慣による要因も関係しています。

遺伝について相談したいときは?

遺伝や遺伝性の疾患に関する悩みを抱えているとき、または遺伝子検査(遺伝子診断)を受ける際の不安なこと、分からないことがあるときは、臨床遺伝専門医、または認定遺伝カウンセラーなどに相談できます。しっかり相談してから検査を受けることをおすすめします。

かかりつけの医療機関がある方は、まずそちらで相談されてください。
相談する場所がない場合や、それが難しい場合は、全国遺伝子医療部門連絡会議のホームページにある「遺伝子医療実施施設検索システム」から調べることができます。

※「親子鑑定をしてほしい」など、医療と直接関係しない事柄では対応が難しいことがありますのでご了承ください。
※DNAチップ研究所では相談を受け付けておりません。

9.DNAチップ研究所ってどんな会社?

人々の健康に貢献していくために

DNAチップ研究所は、遺伝子を解析する技術を基盤にして、研究する人を支援する「研究事業」と診断技術の開発・提供をする「診断事業」で人々の健康に貢献することを使命としています。

受託サービス
大学や研究機関、企業向けのサービスです。研究の目的に合わせて、実験デザインの提案、データ解析などのサービスを提供しています。

研究開発・製品販売
オリジナルの遺伝子解析メニューや製品の開発・販売をしています。

遺伝子検査
DNAチップ研究所で開発した遺伝子検査「EGFRリキッド」「肺がんコンパクトパネル」を提供しています。

研究開発
遺伝子を解析する技術を活用して、「個別化医療」の実現に向けた診断技術を開発しています。

10.遺伝子解析技術の紹介

PCRとは

新型コロナウイルスの検査としてPCRが知られるようになりましたが、PCRは新型コロナウイルスの検査に限ったものではありません。

PCRとは、ごく微量のDNAを大量に増やす手法のことで、「微生物」や「ウイルス」などや、「調べたい遺伝子配列」が存在しているかどうかを知ることができます。


※画像はあくまでイメージです。実際の大きさとは異なります。

①調べたい検体(血液、細胞、組織、唾液など)からDNAをとりだします。

②調べたい微生物の遺伝子配列、調べたい遺伝子の配列の両端を認識する「プライマー」を作ります。

③DNAは熱をかけると2本鎖がほどけ、温度を下げると元の2本鎖に戻る性質があります。まず、熱をかけてDNAを1本ずつの鎖にします。その後、温度を少しずつ下げていくと、元々結合していたDNAと2本鎖に戻る前に、プライマーが1本鎖のDNAに結合して2本鎖になります。

④プライマーが結合したところを起点として、ポリメラーゼという酵素でDNAを合成します。③④を繰り返して、2倍、4倍、8倍とDNAを増やします。

PCRの原理を応用し、DNAを増やす過程をリアルタイムに増え方をモニタリングして解析する方法が「リアルタイムPCR」です。

マイクロアレイ

スライドガラスなどの基盤の上に、4種類の塩基でてきている遺伝子配列を並べたマイクロアレイ(DNAチップ)を使って遺伝情報について調べます。

①細胞や組織からmRNAなどをとりだします。

②mRNAをコピーして蛍光色素で色を付け(ラベリング、ラベル化、標識)します。

③マイクロアレイの上には、遺伝子配列が並べてあります。

④蛍光色素を付けたRNAを含む溶液をマイクロアレイの上にのせて、マイクロアレイ上の遺伝情報に貼り付けます。アデニン(A)は必ずチミン(T)と、シトシン(C)は必ずグアニン(G)と結合する性質を利用しています。これを、ハイブリダイゼーションといいます。

⑤良く働いている遺伝子ほどmRNAの量が多くあり、すると、他の遺伝子より多くハイブリダイゼーションします。多いほど蛍光が強くなります。

⑥それぞれの遺伝子情報の蛍光の強さを測定し、mRNAの量比を計算します。

⑦一度の実験で、網羅的に遺伝子の変化を測定できます。

シーケンス(サンガーシーケンス)

調べやすい長さにカットしたDNAを、次世代シーケンサーという機械で一塩基ずつ蛍光を光らせながら測定し、塩基の種類を検出します。検出した塩基をコンピューター上でつなげて元のDNAの塩基配列を調べていきます。

①DNAを調べやすい長さにカットします。

②PCRで調べたい遺伝子のDNAを増やしますが、ddA・ddG・ddC・ddTと呼ばれる特殊な塩基を混ぜます。ddAなどの塩基が入ると複製とまってしまう特徴があり、長さの異なったDNAのコピーの混合物を作ります。

③長さの異なる蛍光色素の付いたDNAのコピーの混合物をシーケンサーの中で、短い配列から順番に並べます。短いものから順に蛍光を判別して塩基のならびを読み取ります。一度に、500~800個の塩基配列を読み取ることができます。

次世代シーケンス

塩基配列を早く、大量に調べるために開発された方法です。調べやすい長さにカットしたDNAを、次世代シーケンサーという機械で一塩基ずつ蛍光を光らせながら測定し、塩基の種類を検出します。検出した塩基をコンピューター上でつなげて元のDNAの塩基配列を調べていきます。

①DNAを調べやすい長さにカットします。

②カットしたDNAの両端に目印となる配列を付けて、検出しやすいようにPCRで増やします。

③次世代シーケンサーという機械で、一塩基ずつ蛍光を光らせながら測定し、塩基の種類を検出します。

④検出した塩基をコンピューター上でつなげて元のDNAの塩基配列を調べていきます。