ご挨拶/インタビュー
代表取締役社長 ご挨拶
代表取締役社長執行役員の橋本宜明です。
DNAチップ研究所は、次世代シーケンサーを用いた診断コンテンツの開発力や、受託事業を通じて培った高い遺伝子解析技術を活かし、国内初の肺がんのコンパニオン診断である「肺がん コンパクトパネル®」の事業化を始め、多くの医療機関・患者様に貢献しております。
現在、コンパニオン診断の他疾患への展開や、コンパニオン診断に留まらない診断コンテンツの拡充、海外への事業展開も検討しております。
医療を通して社会に貢献するという志を持って、今後も社員一丸となり高い目標に向け挑戦を続けてまいります。
三井化学グループとなることで研究開発基盤・事業基盤を一層強化し、最先端の技術で医療を通して社会に貢献し続けるグローバル検査診断サービス企業として、これまで以上に人々の健康に貢献してまいりますので、DNAチップ研究所の次なるステージでの活躍にぜひご期待ください。
代表取締役社長執行役員 橋本 宜明
副社長執行役員CSO ご挨拶
DNAチップ研究所は、最先端の遺伝子解析技術を基盤に、創立以来「精度」「品質」「信頼性」を追求してまいりました。情報解析を活用した遺伝子データ解析プラットフォームを構築し、がん個別化医療の遺伝子検査や研究・創薬支援サービスを病院、アカデミア、企業等に提供しています。
経営と研究の融合を図るため、研究部門と事業部門が一体となり、市場ニーズに合わせたサービス、製品開発に注力しています。
社員一人ひとりがオープンイノベーション精神を持ち、自律的なチャレンジを奨励する組織文化を育んでいます。
今後はメディカルIoTやAIや機械学習技術等を活用し、さらなる個別化医療の実現と健康長寿社会の構築に貢献する所存です。
皆さまには、当社の成長と挑戦にぜひご期待・ご支援を賜りますようお願い申し上げます。
副社長執行役員CSO 的場 亮
副社長執行役員CSOインタビュー
「人々の健康に貢献することが使命」
プロフィール

株式会社DNAチップ研究所
副社長執行役員CSO 的場 亮
主な研究、論文:バイオマーカー開発、遺伝子ネットワーク解析、再生医療
Generation and Profiling of 2,135 Human ESC Lines for the Systematic Analyses of Cell States Perturbed by Inducing Single Transcription Factors. Cell Rep. 2020年
DELIVER (JACCRO GC-08) trial: discover novel host-related immune-biomarkers for nivolumab in advanced gastric cancer. Future Oncol. 2019年
A set of external reference controls/probes that enable quality assurance between different microarray platforms. Anal Biochem. 2015年
Dissecting Oct3/4-regulated gene networks in embryonic stem cells by expression profiling. PLoS One. 2006年
「層別化医療」が実現段階に
― DNAチップ研究所が世の中に提供する価値を一言で述べるならば、どのように表現しますか。
的場 : 「人々の健康に貢献すること」でしょうか。
研究所という名のとおり、もともと当社は研究者へ最新の技術・情報を提供し新しいサイエンスを推し進める役割としてスタートしました。これは今も継続しています。
そうやって培ったノウハウをもとに「より多くの、一般の方にも貢献できるものはないか」という視点でサービス化したものが、現在注力している「がん診断技術」です。
特に、当社が強みを持つ遺伝子情報の解析技術を人々の健康のために役立たせる。ここに価値や使命があると考えています。
― 遺伝子情報を使った診断技術が世に与えるインパクトについて、お聞かせください。
的場 : 従来は「この症状ならこの病気だから、この治療法」という画一的な診断で、当然ながらそこには限界があります。
しかし、国際的なゲノム解析プロジェクトも完了し、遺伝子の多様性が明らかになり、その遺伝子によって「個人個人の病気のなりやすさ、なっているならばその人にはどの薬が効くか」という判定までできるようになってきました。これは「精密医療」(別の言葉で言うと「層別化医療」)の実現に繋がるわけです。その人の遺伝的なバックグラウンドによって緻密に”層”を”別”ける、つまりカテゴライズして最適な治療法を選択できる糸口がはっきりと見えてきたと。当社が開発を進めている「肺がんコンパクトパネル」などがまさにそれにあたります。
― そういったこれまでにない診断技術を誰もが享受できる日が待ち遠しいところですが、見通しはいかがでしょうか。
的場 : 「EGFRリキッド(※1)」の薬事承認に引き続き、「肺がんコンパクトパネル(※2)」の薬事承認を得て、2023年2月から保険収載(健康保険適応)されました。
また、中長期的な話題として国をあげて日本人に特化したゲノム解析プロジェクトが動き出しました。解析が進めばそのデータを活用し、より日本人向けの遺伝子診断精度を向上させていくことができます。さらなる遺伝子検査サービスの開発へ向けて、追い風となる要素です。
― 2023年2月に上市された肺がんコンパクトパネルにつきまして、今後の展望をお聞かせください。
的場 : かなり精度の高い遺伝子検査を開発できたと自負しています。まずは、しっかりと日本の中で広く使っていただけるように活動を続けていきたいと思います。
最近では、他の癌種についても同様に複数の遺伝子を一括で調べる遺伝子検査の需要が高まっています。将来的には、今回の薬事承認の経験を生かして新たな遺伝子検査を開発、上市していきたいと思います。さらには日本発の非常に高精度な遺伝子検査サービスを海外へ展開したいと考えています。
予防医療で「健康寿命」を延ばしたい

― がんやうつ病の診断精度が上がり、どの薬が自分に合うかわかる――これは多くの人が望んでいることですよね。一方で、そういった病気になる前に手を打つ、いわゆる「予防医療」も、DNAチップ研究所では従来から掲げています。
的場 : 人は亡くなる前の10年ほど、なんらかの病気でつらい思いをすることが多いため、その時間を減らして、いわゆる「健康寿命」を延ばしたいんです。
病気の定義というのは、たとえば高血圧という言葉でもわかるとおり、数値の高低が基本になりますよね。これを一律に判定するのではなく、遺伝子情報の多様性や年齢・体重などあらゆる背景データも用いることで、総合的に“病気の気(け)”を察知できると考えています。
もちろん、ある意味で未来予測でもあるため「100%この病気に罹る」「こうすれば100%病気にならない」というものはありません。しかし、我々の得意とする遺伝子解析や診断技術の先には、この予測を極限まで正確にできる道筋が見えてきています。
病気になる前の状態を科学的に明らかにしていくという意味で、東洋医学の「未病」を定義づけようとしているのかもしれませんね。
未来の社会に必要なものを、我々の技術で
― 今も論文執筆をする現役の研究者でありつつ、上場企業の社長というのは自身としてどういう心持ちでいますでしょうか。大きな強みである反面、マネジメントや財務など別の分野でハードルもあったのではないかと思います。
的場 : DNAの多様性と同様に、世の中にいろんなタイプの社長がいたほうが良いのではないか、と自分では思っています(笑)
振り返ってみて幸運だったのは、代表就任と前後して大手企業出身の経験豊富な方々が社内にいてくれたことですね。いわゆる企業経営としての様々な現実を実地で学ぶ機会に恵まれたんです。
また、経験して実感したのは「課題がある→研究・開発などのアクションを起こす→外部からの評価を受ける」というプロセスは、研究の世界であろうと市場であろうと基本は変わらないということでした。さらに言うと、社長という立場は大学組織の教授とも近いポジションかもしれません。すべて自分で研究や実験するわけではなく、計画を立て、資金を調達して、人材を確保して……という意味で共通点がたくさんあると思います。
― その人材確保の面ですが、高度で専門的な分野ゆえに今後の展開に大きく関わるのではないでしょうか。
的場 : そうですね。研究者目線で考えますと、ベンチャーということもあり、大きなしがらみもなく自発的な研究がしやすい、力をつけやすい環境は魅力的だと思います。そう言ってしまうと「サイエンスがベースの会社だから、技術先行でマーケットを無視している」ともお叱りを受けそうですが、今の流行やニーズだけ見るのではなく、未来の人間社会に必要なものを我々の技術で提供していく。そこに意義があると思うのです。
広く採用活動をしてきたわけではないのですが、今後はそういったスタンスで研究開発を続けられるメリットを伝えていきたいですね。
(※1)EGFRリキッドとは:
肺がんの患者さんを対象にEGFR遺伝子の変異があるかないかを調べる検査です。
EGFR遺伝子はがん細胞の増殖に関係するといわれており、肺がんでは、この遺伝子の一部に変異がみられる場合があります。
変異がみられた場合に効果を発揮する治療薬があり、その治療薬が適しているかどうかを判定することが検査の目的となります。
(※2)肺がんコンパクトパネルとは:
肺がんでは、EGFR遺伝子のほかにも、細胞のがん化に関係するといわれている遺伝子が見つかっており、それぞれの遺伝子に特化した薬がすでに複数開発されています。
しかし従来の検査では、1つの遺伝子毎に1つの検査を行うというものでした。
「肺がんコンパクトパネル」は、EGFR遺伝子のほか、“すでに治療薬が対応している遺伝子”、そして“近い将来上市される治療薬が対応する遺伝子”を同時に検出する高感度な検査です。そのため、最適な治療薬の選択に役立つと考えられます。
2023年に薬事承認され、実際の医療現場で使用され始めています。
Contact
会社情報・IR情報に関するお問い合わせ